原著
ペニシリン腟内移行について
森 武史
1
1京都府立醫科大學産婦人科教室
pp.468-471
発行日 1953年8月10日
Published Date 1953/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200879
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I.緒論
抗生物質の體液中に於ける濃度の消長は抗生物質の投與方法の指針となる重要な問題であり,各醫界がその關係の深い體液への移行性について盛に研究を行つて居る。
吾が産婦人科領域に於てはGreen1)はPeni-cillin(以下「P」と略)の乳汁への移行性を,Herrell2)は臍帶血,菊地3)は羊水への移行性を證明して居るが,腟内容への移行性については未だ何人によりても着手されて居らない。然もこれは治療醫學の方面から見て多大の關心事であるにも不拘,今猶未検討であるのは腟内容を實驗に供し得るだけ充分採取する事が困難なためと,無菌的に採取することが出來ないため,抗性物質の作用に影響する諸因子を考慮に入れなければならないからだと思う。私は此等諸因子を考慮に入れ「P」の腟内容への移行性の證明と濃度の消長を研究した。「P」の抗菌作用に影響する因子の中腟内容に存在すると考えられるものには(1)腟温(2)腟内容のpH (3)腟内容細胞成分の存在(4)腟内細菌群の存在等が擧げられる。
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