診療室
人工妊娠中絶に依る母體の障碍—昭和24年以降子宮内容除去術を施行された患者に就ての調査
本庄 保
1
,
市村 桂子
1
,
鈴木 康弘
1
,
辻 邦宏
1
1順天堂大學醫學部産婦人科教室
pp.297-301
発行日 1953年5月10日
Published Date 1953/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200836
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はしがき
昭和23年9月優生保護法が施行され,さきに人工妊娠中絶を極力制限するために判定された戰時中の優生法が改められて以來,人工妊娠中絶が激増し,其の後昭和24年に法の一部改正が行われ,更に本年5月優生保護法中人工妊娠中絶に關する條項が徹底的に改正され,中絶の適應許容範圍が擴大されるに至つて最近益々増加の一途を辿つている。厚生省の調査に依ると昭和24年の中絶總數は約25萬,25年は約49萬,26年は約64萬とまさにうなぎ昇りの増加を示している。此の様な中絶の漸増傾向に平行して母體の障碍例の報告も數多く見られるようになつた。中絶殊に子宮内容除去術に關しては,従來でも兎角輕視され安易に取扱われて來た憾みがあつたが,中絶制限の緩和により更に拍車をかけられ,指定醫制度が設けられたにも拘らず,非指定醫,或は助産婦を訪れて施術を依頼するというような認識不足な者もあり,障碍激増の因をなしている。障碍といつても手術時に突發する危険症から手術直後の諸種障碍乃至術後後遺症など廣範圍に亙り母體に及ぼす影響は相當に深刻である。此の様な見地から母子愛育會母性保健部會に於ても近く此れに關して全國的に依頼調査を行うことになつているようであるが,吾吾も約1年前より當外來を訪れた患者に就て此の調査を行つているのでその成績を茲に報告する。
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