特集 避妊と不妊
避妊の理論と実際
人口問題からみた避妊
舘 稔
1
1外務省人口問題研究所
pp.642-647
発行日 1952年12月1日
Published Date 1952/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200741
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.序論
人口は人間の集團である。この人間の集團である人口は獨自の運動を営んでいる。『ゆく川の流れは絶えずしてしかももとの水にあらす……』こうして人口の運動はあまりにもしばしば流水にたとえられてきた。このたとえはいかにも美しいが,人口の運動は,流水のような他動的,機械的な運動とは本質的に異つている。人口の運動の本質は,一定の秩序をもつて,人口の内面から發現する出生と死亡とによる自己再生産力に基ずく獨自の自動運動なのである。
人口を構成する個々の人間は生物であるから,人口は生物集團に働く生物學的法則の適用をうける。けれども,人口を構成する個々の人間は,具體的に,何等かの社會集團の1員として社會的に生存し活動する,それゆえに,人口に働く生物學的法則は社會の『場』において作用する。この意味で人口現象は社會的に規定される。すなわち,人口現象の本質的特質は有機的,社會的自己再生産運動であるという點にある。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.