診療室
附屬器炎殊に卵管溜膿腫手術に於ける癒着剥離の一方法
林 桂三
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1小倉記念病院産婦人科
pp.514
発行日 1951年12月10日
Published Date 1951/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200564
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廣汎な癒着を有する附属器炎殊に卵管溜膿腫の剔除手術に於ては癒着の剥離法は各人の好みや長ずる所に從い各人各樣であつて一定の方式がない樣である。成書には附屬器の剔除術式として内向法と外向法を區別し,癒着の輕い場合は内向法により,癒着の廣汎且つ強靱な場合は外向法によつて剔除を行うと説いている。また外向法には子宮切半法及び子宮斷頭法ありて先づ子宮體を遊離して移動性となした後,癒着を基底部から外面に向つて剥離し附属器を遊離して剔除すると述べこいる。實際子宮切半法及び子宮斷頭法は甚だ便利な方法であるのでこれを利用するものが多く,その結果子宮腟上部切斷術が必要以上に行われているのが現状である。この手術を受けるものは比較的若年者に多く,また最近腟上部切斷後不感性を訴えるものも少くないことが注意されているので,この種の手術について一考すべきであると思う。事實この手術を受けて若年者でホルモン缺落症状を訴えて外來を訪れる患者が少くない。
私は廣汎な癒着を有する場合でも必ずしも子宮切半法又は斷頭法を必要とせず,次の方法によれば癒着せる腸管や輸尿管等を傷つけず比較的容易に癒着を剥離し,附屬器を剔出することが出來ると考え,興味ある方にすすめたいと思う。手術の方針としては他側附属器の變化が輕度である場合は一側の附屬器のみ剔出する樣に心がけている。
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