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婦人の虫垂炎
淸水 直太郎
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1前橋醫科大學産婦人科學教室
pp.211-216
発行日 1949年6月10日
Published Date 1949/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200209
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虫垂炎は一般に婦人には男性より稍々少ないか或は略々同率とされて居る(第1表).婦人に於ける虫垂炎の特異性はそれが婦人科的疾患及び妊娠・分娩・産褥と密接な關係を有することにより生ずる.
婦人科的諸疾患の,中特に附屬器疾患が虫垂炎と緊密な因果關係があることはPankow,Koblanc,A.Mueller,Haselhoarst等の齋しく認める處である.盲腸下端と卵管綵との間の距離は普通數糎に過ぎず,又盲腸下端,虫垂根部及び後腹壁から右側卵巣に向う櫛状の腹膜襞(Clado氏靱帶)で虫垂と右側卵巣とは直接の連結があり,ここに血管の交通はないとしても恐らく淋巴管の交通はあると考へられるから,兩者の炎症が互に因果關係を示し得ることは當然である.兩者の炎症徴候は酷似するから實地上互に誤診し易いことは周知のことであり,又兩炎症が併存することも稀でない(Ulbrich,Otto,白木等)から開腹の際は兩者を檢査することが必要である.虫垂炎の急性期症状は男性に於けると同じく廻盲部疼痛,發熱,惡心,嘔吐等を見るが,時に比較的輕度であることがある.婦人では輕度の苦痛は性器からのものと考へて看過されるととが比較的多く,從つて急性發作の時期を過ぎ,膿瘍が性器を侵してから來院するととがある.炎症が虫垂から附屬器に波及すると急性期には卵管・卵巣・廣靱帶,腹壁及び虫垂が一つの腫瘍を呈し,相互の癒著の間に膿性浸出液が認められる.
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