原著
産婦人科的觸診法の是正強化
安藤 畫一
1
1慶應義塾大學醫學部
pp.49-51
発行日 1946年7月20日
Published Date 1946/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200074
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視,聽,打,觸4種の普通診察のなかで,その迅速性と確實性とにをいて,最も優れたるば視診で,最も劣るのは觸診である。そして産婦人科特有の診察法としては,觸診が最も重要であつて,視診による部は少なく,聽診及び打診はただ特別の場合のみである。從つて産婦人科診斷は不正確は免れない本質性を持つてをるといへる。この本質的不備を熟練及び經驗の力によつて僅かに補つてをるところに,レントゲン寫眞診斷法が加へられて急激な進歩發展を見るに至つたのである。元來レントゲン診斷法は視診法の擴大延長であつて,從來視診の不可能であつた内性器の形態を直接的または間接的に視診せしむる方法である。從つて産婦人科診斷も甚だしく正確さを増したとともに,主として觸診檢査によつて樹立せられた各種の産科學説は,大なり小なり改訂を餘儀なくせられたのである。但しこの感謝すべき診斷法も高價な機械装置を必要とする關係上,その應用は一部に限局せられ,大部分はその恩惠に浴することが出來なかつた。しかも近時の戰災は一部の恩惠をも奪去し,再び舊態に逆戻りするの止むなきに至つた。
かくして器械に依存するの非を悟り,即時勝手に使用し得る手指の有難さを今さらのやうに感ずるとともに,觸診法の是正強化を強調せねばならぬことゝなつた。
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