今月の臨床 ART─いま何が問題か
生殖医学・医療のトピックス
6.卵細胞質置換―基礎研究から臨床応用へ
薮内 晶子
1
,
香川 則子
1
,
青野 文仁
1
,
竹原 祐志
1
,
加藤 修
1
1加藤レディスクリニック先端生殖医学研究所
pp.808-812
発行日 2011年6月10日
Published Date 2011/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102703
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はじめに
卵子の成熟や初期胚発生には卵細胞質が重要な役割を果たしている.しかし,加齢に伴い,卵細胞質の細胞骨格などの機能不全による染色体不分離卵子の増加1),ミトコンドリアの機能不全2)による胚発生率の低下など,妊娠率低下の原因となる要素が増加すると考えられている.その治療方法として,細胞質内精子注入(ICSI)法を施行する際などに使用する,マイクロマニピュレーション技術を用いて,患者(ドナー)由来卵子の卵細胞質とレシピエント由来卵子の卵細胞質を置換する方法,すなわち卵細胞質置換技術が有効であると提唱されている.また,同法は,ミトコンドリア病患者の変異あるいは欠失ミトコンドリアDNAを持つ卵細胞質を正常なミトコンドリアを持つ卵細胞質に置換し,ミトコンドリア病の次世代への発症を予防する方法としても有効であると考えられている.本稿では,卵細胞置換技術に関する,基礎研究の紹介とともに,臨床応用へ向けての今後の課題について考察したい.
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