今月の臨床 母体と胎児の栄養学
産褥と新生児の栄養管理
3.糖尿病と母乳育児
水野 克己
1
1昭和大学医学部小児科
pp.708-712
発行日 2011年5月10日
Published Date 2011/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102679
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
糖尿病を合併した女性では,インスリンの作用が不足するため乳汁生成II期への移行が遅れたり,帝王切開や分娩時に介入が必要となりやすいなどのため母乳育児のスタートがうまく切れないことも多い.また,血糖コントロールについても,出産後は妊娠中ほど厳格さを必要としなくなるものの,子育てによる疲労やストレスがあると血糖の自己管理が困難となるかもしれない.糖尿病を合併した女性は,乳腺炎を代表とする乳房感染症に罹患しやすいことも,母乳育児の継続を困難とする因子である.一方,糖尿病を合併した女性から出生した児は低血糖,黄疸などのためNICUでの治療を要することも散見され,結果として母子分離につながる.このような理由から糖尿病を合併した女性が母乳育児を継続することは困難と考えられていた.そのようななかで,糖尿病を合併した女性が母乳育児を行うことは,児だけでなく女性自身にも利点が多いことが報告されるようになってきた.さらに,近年の糖尿病治療と管理の発達により,糖尿病を合併した女性も安全に妊娠・出産できるようになり,母乳でわが子を育てることを希望することも多くなった.糖尿病を合併した女性が希望する母乳育児を実現できるような母乳育児支援について,医療者が知っておいてほしい内容を概説する.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.