連載 サクラの国のインドネシア・7
「負ける」と「頑張る」
東梅 久子
1
1虎の門病院産婦人科
pp.326-327
発行日 2010年3月10日
Published Date 2010/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102301
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新年の感覚
年末にあるインドネシア人看護師を誘った.12月31日の夕方なら空いているという.いかにもインドネシア人らしい.大晦日の夕方に人に会おうという日本人は多くないであろう.12月31日の夜,インドネシアではおもちゃのラッパの音がけたたましく響き渡り,あちこちで花火が上がる.神聖な日本のお正月と違って,年越しはお祭り騒ぎである.
国民のおよそ9割がイスラム教徒のインドネシアで日本のお正月に当たるのは,イスラム教の断食明けである.断食明けが近づくと日本の年末と同じように大移動が始まり,大きな荷物を抱えた人たちで交通機関は混雑する.当然ながら事故も増え,ニュースに「犠牲者」の言葉がない日はない.貧しい人たちに配られる現金などを目指して人が押しかけ,将棋倒しになっても「犠牲者」が出る.断食明けを個人的には「犠牲者」という言葉とともに思い出す.
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