今月の臨床 母体救命搬送
【救急搬送のタイミングと応急処置】
1.緊急に救命処置が必要な産科疾患
3)重症妊娠高血圧症候群および関連疾患
山崎 峰夫
1
1神戸大学大学院医学研究科総合臨床教育・育成学/産科婦人科学分野
pp.22-25
発行日 2010年1月10日
Published Date 2010/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102250
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はじめに
妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension : PIH)は母児の転帰に重大な影響を及ぼす可能性が高い周産期領域の最重要疾患である.すでに臓器障害が顕症化した症例の母児予後を警戒すべきことはいうまでもないが,発症の初期段階と思われた症例が急速な病態の重篤化によって母や児に異常が発生することも稀ではない.そのため,産科医師にとって,自施設で管理困難な症例をより高次の施設へ紹介・搬送するタイミングをみきわめることは重要である.ただし,転院の基準は紹介元施設の診療体制,すなわち母体と児の管理可能範囲に依存しているが,その範囲は同じ規模・レベルの施設であっても人的要因や地域における周産期医療体制によって差があるのは当然である.また,同一施設でも,時間外や休日といった時間的背景による制約を受けることも多い.したがって,「搬送すべき基準」を画一的に解釈することは適切ではない.幅広い危機管理意識をもって症例ごとに対応するという意識が求められる.
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