今月の臨床 胎児の診断と治療―最近のトピックス
【治療の最前線】
5.胎児外科治療の最新情報
千葉 敏雄
1
,
宮本 隆司
2
1国立成育医療センター臨床研究開発部
2群馬県立小児医療センター心臓血管外科
pp.965-973
発行日 2009年7月10日
Published Date 2009/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102140
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はじめに
胎児の2~3%に認められるmajor structural anomalyは,先進国でもいまだ,周産期死亡の原因の20~30%を占めている.このような状況のなかにあって,近年の胎児治療の進歩により,先天的異常を有していても健全に成育し得る小児の周産期死亡あるいは長期的QOLの低下を防ぎうる可能性が,今現実のものとなっている.胎児外科治療(fetal surgery, maternal─fetal surgical intervention)とは,異常を有する胎児(あるいは胎盤・臍帯)に対し,何らかの外科的手技を用いて,子宮内にあるままで出生前に行われる治療ということができる.ここで留意すべきことは,胎児とは,形態的にはもとより生理・生化学・病理学的にも決して新生児の単なるミニチュアではないということである(この点は,新生児が,単に成人を生理的・代謝的に小さくしただけの存在ではないのと同様である).したがって,胎児病態の子宮内自然歴(natural history)もきわめて特異的なものとなることへの理解が必要とされる.このような点を背景として,今回筆者に与えられた課題につき,以下順序だてて整理してみたい.
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