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血液中のプロラクチン(PRL)の値が正常範囲を超えて高値を示す場合,高PRL血症という.血液中のPRL値が上昇すると,乳汁漏出や排卵障害が起こり,乳汁漏出性無月経を呈する.正常成熟期女性の血中PRL値の平均値は5ng/ml前後であり,測定系がスパック─S PRLでは15ng/ml以上,アーキテクトPRLでは30ng/ml以上であれば高PRL血症と診断される1).厚生省の間脳下垂体機能障害調査研究班が行った原因疾患別頻度の調査結果(表1 2))によると,高PRL血症の原因として下垂体腺腫(プロラクチノーマ)が最も多く,約1/3を占める.プロラクチノーマは全下垂体腺腫の30~40%を占め,女性に多く発生する(男女比は1:8).
頭部のMRI検査は視床下部・下垂体における高PRL血症の原因となる占拠性病変の検出に大変有用である.PRL値が100ng/ml以上の場合,プロラクチノーマの可能性が高い.プロラクチノーマは腫瘍の大きさにより,マイクロアデノーマ(10mm未満)とマクロアデノーマ(10mm以上)に分類される.PRL値が200ng/mlを超える場合は,マクロアデノーマであることが多い.一方,PRL値が30ng/ml程度の軽度の高PRL血症であっても,マイクロアデノーマ,非機能性腺腫,中枢神経系の奇形などの可能性もあるので,薬剤の服用やその他の高PRL血症の原因がない場合は,トルコ鞍のMRI検査を行うべきである3, 4).また,30mmを超える大きなプロラクチノーマの場合,測定上の問題で実際のPRL値より低く検出されることがある(hook effect)5).マクロアデノーマの6~14%にhook effectが認められるとの報告があるので診断に際して注意する必要がある6).高PRL血症の鑑別診断手順と治療方針を図1に示す.
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