今月の臨床 胎児機能不全
胎児機能不全の病態
鮫島 浩
1
1宮崎大学医学部産婦人科
pp.1518-1521
発行日 2008年12月10日
Published Date 2008/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101915
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はじめに
胎児機能不全とは,non─reassuring fetal statusまたはnon─reassuring FHR patternの邦訳であり,原語の概念を発展させ,日本産科婦人科学会が提示した用語である.そこで本稿では,胎児心拍数モニタリング(FHR monitoring)の解釈に際して,胎児機能不全と判断されるさまざまな病態について概説する.
胎児心拍数モニタリングの解釈と評価,さらにその管理方法に当たっては,パターン認識と同時に,背景にある胎児胎盤生理学の理解が必要である.換言すれば,胎児生理学の理解なくしては,モニタリング解釈の臨床的意義はきわめて低いということができる.
そこで過去数十年に及ぶ胎児生理学の発展をみると,動物実験モデルを用いた数多くの基礎的研究と,同様に多くの臨床研究とが行われ,胎児生理学と胎児心拍数パターンとの関連が明らかにされてきた.そのなかで最も研究されてきた領域は,元来健康な胎児が低酸素症,虚血,アシドーシス環境下で,呼吸・循環・内分泌系がどのように変化するかに関してであった.すなわち,胎児生理学の視点からは,元来,健康である胎児に低酸素症などのリスクが加わった場合の病態である.この条件を実際の臨床に当てはめると,リスク因子を持たない胎児が分娩中に低酸素などに陥る場合といえる.
そこでまず,低リスク妊娠における胎児機能不全の病態を述べ,次にハイリスク妊娠での病態に関して,現在までに明らかとなっている知見を述べる.
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