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はじめに
子宮内膜症とは,子宮内膜あるいはその類似組織が子宮外でエストロゲン依存性に発育・増殖する疾患であり,生殖年齢女性の5~10%に発症するといわれている1).子宮内膜症病巣は一般的に骨盤内,特に子宮,卵巣,ダグラス窩腹膜,仙骨子宮靱帯および直腸に存在することが多い.頻度は低いものの,肺,胸膜,横隔膜,胆嚢,小腸,虫垂,膀胱,尿管,四肢などにも発症する.子宮内膜症の大部分は生命にかかわる疾患ではないが,主徴である疼痛と妊孕性の低下により,女性のquality of life(QOL)を著しく損なう.
子宮内膜症の治療は基本的に症状に基づいて行われるべきであり,治療目標は,(1)疼痛の除去,(2)子宮内膜症病巣の消失,(3)挙児希望に対する不妊治療の3つである2).そこで,子宮内膜症を取り扱う際には,(1)疼痛の程度と性質,(2)挙児希望の有無,(3)器質的病変,(4)本疾患による不妊の有無などを客観的に評価して,患者の要望や長期予後を考慮し治療法を選択する必要がある.本疾患に対する治療法には薬物療法と手術療法があるが,いずれの症状を対象として治療するかで選択する治療法が異なってくる.不妊症には腹腔鏡下手術が優先し,疼痛には症例に応じて薬物療法と手術療法を選択することになる.加えて,卵巣子宮内膜症性嚢胞の存在も,治療法を選択するうえで重要な因子となる.
実地臨床における子宮内膜症治療に際しては,European Society of Human Reproduction and Embryology(ESHRE)のガイドライン(2007)3)や日本産科婦人科学会の子宮内膜症取扱い規約(2004)4)に沿った治療方針が望まれるが,薬物療法を選択するか,手術療法を選択するか,そのなかでどのような薬剤,術式を選択するかはそれぞれの症例により個別に対応する必要がある.本稿では症状・病状に応じた子宮内膜症に対する治療法について,基本的な考え方を概説する.
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