今月の臨床 卵巣癌診療の最新情報
【卵巣癌治療の将来展望】
4.卵巣癌のウイルス療法
那波 明宏
1
1名古屋大学医学部産婦人科
pp.1353-1359
発行日 2008年10月10日
Published Date 2008/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101884
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はじめに
ウイルスの特性を利用して,新たな癌治療法を開発するための研究が近年精力的に進められている.特にウイルスの増殖能を保持させた形で用いる方法は“oncolytic virotherapy(腫瘍溶解性ウイルス療法)”として,さまざまなウイルスを対象に研究・開発が行われ,現在では臨床試験が実施されているのも少なくない.今回ボストンで開催された第11回米国遺伝子治療学会(ASGT)においても,cancer gene therapy研究分野における演題の大半がoncolytic virotherapyに関連したもので占められており,new anti─cancer agentとしての期待が高まっている.実際,ウイルス増殖,生体防御機構の研究がこの数十年で著しく進展し,この領域も一時的な流行に終わる,いわゆる“際物”から分子的基盤に基づく戦略的研究へと変貌しつつある.とはいえ,当初の期待に反して,臨床試験において画期的な結果を生み出すには至っておらず,さらなる工夫が要求されている.
本稿では,さまざまな増殖型ウイルスを用いたoncolytic virotherapyの現状にスポットライトをあて,われわれが手がけているHF10の開発の現状,さらには卵巣癌治療への応用について概説したい.
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