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はじめに
わが国では内視鏡手術の保険適用の対象は良性疾患に限られているため,そのほとんどが良性疾患を対象に行われている.しかしながら,わが国で現在どの程度の症例が腹腔鏡下に手術されているかを正確に知るのは困難である.
日本産婦人科手術学会において,本邦ではじめての内視鏡手術の頻度調査が行われ,その結果が報告されている1).日本産婦人科手術学会員の所属する559施設ないし診療科を対象にアンケート調査が行われた.ただし単年度調査であり,継続的な調査は行われていない.調査対象は2004年度症例であり,回答は295施設ないし診療科より得られた.回答率は52.8%であった.悪性も含めた総手術数は54,707件であり,その内訳は開腹手術29,318件,53.6%,内視鏡手術15,933件,29.1%,腟式手術9,452件,17.3%,その他4件であった.内視鏡手術の内訳は腹腔鏡下が13,107件と82.3%を占めており,次いで子宮鏡下2,759件,卵管鏡下183件であった.腹腔鏡手術のなかで単純子宮全摘術は腹腔鏡下腟式子宮全摘術(laparoscopically assisted vaginal hysterectomy:LAVH)が1,253件,9.6%,全腹腔鏡下子宮全摘術(total laparoscopic hysterectomy:TLH)が263件,2.0%であった.一方,良性疾患に対する開腹手術のうち単純子宮全摘術は8,635件,腟式手術のうち単純子宮全摘術は3,364件であったので,単純子宮全摘術総計13,515件のうち1,516件(11.2%)が腹腔鏡を用いて行われ,そのうちLAVHが82.7%を,TLHが17.3%を占めることが判明した(図1).
このように子宮筋腫などの良性疾患に対して単純子宮全摘術を選択する際,従来からの腹式,腟式に腹腔鏡下が加わり,その選択の幅は広がっている.そこで,まず腹腔鏡による子宮全摘術のなかでの中心的手術であるLAVHについて,その適応と限界,合併症について述べ,次いでTLHについて述べる.
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