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はじめに
超音波診断装置の普及により,妊娠初期における妊娠の診断のために経腟超音波検査は必須のものとなった.近年の高感度の尿妊娠反応検査と超音波検査を併用することで早期に妊娠の診断が可能となり,多量の腹腔内出血を伴った急性腹症として子宮外妊娠が診断されることは少なくなった.経腟超音波断層法を使用すれば妊娠4週後半から子宮内に胎嚢を確認できるようなり,正常妊娠においては一般に妊娠5週前半には全例に子宮内に胎嚢が認められる1).一方,最近多くの施設で頻用されている尿中hCG定性キットの感度は25~50IU/mlと非常に高感度であり,早ければ妊娠3週後半には陽性となる.このように妊娠反応が陽性になる時期と経腟超音波検査で胎嚢が確認できるようになる時期には数日の差があるため,日常の臨床のなかでも妊娠反応が陽性で子宮内に胎嚢を認めない症例をしばしば経験する.妊娠の極早期には0.8mm/日程度で胎嚢の発育がみられる2)ので,2~3日経てば確認できるようになる.したがって,このような場合は数日から1週間後には再度経腟超音波で胎嚢を確認するべきである.妊娠5週以後で妊娠反応が陽性であるにもかかわらず,子宮内に胎嚢を認めない場合は異所性の妊娠を強く疑う必要がある.基礎体温の記録があったりARTで成立した妊娠など妊娠週数が正確である場合を除いては,患者の自己申告である最終月経をもとに妊娠週数を算出することが多い.しかしながら,最終月経が不正確であったり月経と思っていた出血が妊娠初期の出血であったりする場合もあるため,妊娠反応が陽性で子宮内に胎嚢を認めない場合は子宮から付属器にかけてとその近傍を十分に観察する必要がある.尿中hCG値が1,000IU/ml以上であるにもかかわらず子宮内に胎嚢が確認できない場合は80%以上の確率で子宮外妊娠である3)といわれており,子宮内腔以外の観察や骨盤内の腫瘤の有無について注意深く観察する必要がある.
子宮外妊娠はIVF-ETなどの生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)の普及ならびに,クラミジアや淋菌などの性行為感染症(sexually transmitted diseases:STD)の蔓延に伴い近年増加傾向にある.自然妊娠における子宮外妊娠の95~98%は卵管に発生するのは既知のことであるが,卵管妊娠以外の異所性妊娠には,卵管間質部妊娠,子宮頸管妊娠,帝王切開瘢痕部妊娠,卵巣妊娠,腹腔内妊娠などがある.本稿では異所性妊娠のなかでも比較的稀な頸管妊娠,卵管間質部妊娠,帝王切開瘢痕部妊娠の診断について,主に超音波検査所見を中心に述べる.
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