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膜性診断と卵性診断の違い
一昔前までは,産婦人科医の間でも膜性診断(chorionicity)と卵性診断(zygosity)が混同して使用されていた.そのため,当然ながら一般妊婦においてはこの傾向がより強く,卵性診断と膜性診断が混同して使用されていることが多い.妊娠のプロセスは,1つの卵子と1つの精子が受精して受精卵となり,細胞分裂の過程を経て胎芽・胎児となっていく.そのため通常の単胎妊娠は1つの受精卵から1人の胎児となるためすべて一卵性(1つの受精卵)の単胎ということとなる.この通常の妊娠の過程が同時に子宮内で複数起きる場合が多卵性の多胎妊娠となる.2つの受精がほぼ同時に起こり,子宮内で2つの受精卵から2人の胎児が成長していく場合は,二卵性双胎(dizygotic twin, fraternal twin)となる.この場合,お互いの受精卵(および胎児,胎盤)は完全に独立しているため,実質的には兄弟姉妹が同時に子宮内で発育していると考えると理解しやすい.兄弟であるため,よく似ていることも似ていないこともあり,性別や血液型なども同じことも異なることもあり得る.一方,一卵性の多胎妊娠は,受精卵は1つであるが,細胞分裂の過程で(通常は胚盤胞程度まで)複数に分裂し,それぞれから胎芽・胎児へと成長していく.そのため一卵性双胎(monozygotic twin, identical twin)では,原則的に同じ遺伝情報を引き継ぐためよく似ていることは当然であり,性別や血液型なども同一である(図1).
膜性診断は,絨毛膜および羊膜の数で診断する.通常,1人の胎児(胎芽)には,1つの羊膜と1つの絨毛膜で囲まれていて胎嚢を形成する.二卵性双胎では互いに独立しているため,1人の胎児の周りにはその胎児に属する羊膜と絨毛膜が1つずつあるため,全体では2絨毛膜2羊膜となる.最近報告されているごく一部の例外(二卵性1絨毛膜双胎:後述)を除いて,二卵性双胎はすべて2絨毛膜2羊膜双胎となる.一卵性双胎では,受精卵の分割する時期により3つの膜性診断のパターンに分類される.すなわち,2絨毛膜2羊膜(dichorionic diamniotic:DD)双胎,1絨毛膜2羊膜(monochorionic diamniotic:MD)双胎,1絨毛膜1羊膜(monochorionic monoamniotic:MM)双胎である.一卵性双胎では,原則的に受精後3日以内の桑実胚までの時期であればDD双胎,4~7日の着床前の胞胚の時期ならMD双胎,8~12日の着床後の胚盤であればMM双胎となると考えられている(図2).
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