今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション
ここが聞きたい105例の対処と処方
VI そのほか
【尿失禁】99.トイレに行くまでに尿が漏れるという切迫性尿失禁が疑われる患者です.
角 俊幸
1
1大阪市立大学大学院医学研究科女性病態医学(産科婦人科学)
pp.636-637
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101532
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1 診療の概説
切迫性尿失禁は,一般的に運動性と知覚性に分かれる.運動性は脳血管障害,脳腫瘍,脳外傷など,大脳排尿中枢の障害により橋部排尿中枢への抑制が低下し,その結果ちょっとした膀胱への刺激でも排尿反射が誘発される.知覚性は,排尿中枢は正常であるが,膀胱炎,膀胱腫瘍,膀胱結石などによる極度の尿意が排尿中枢からの抑制を上回るものをいう.
しかしながら,明らかな障害が認められないにもかかわらず,切迫性尿失禁の症状を呈する場合が多く,このような症状をこれまでは「不安定膀胱」と呼んでいたが,2002年にICS(国際尿禁制学会)より過活動膀胱(overactive bladder:OAB)という概念が提唱されるようになり,これは「尿意切迫感を有する状態を意味し,通常,頻尿・夜間頻尿を伴い切迫性尿失禁の有無は問わない」と定義され 1),不安定膀胱もこの症候群の1つとして解釈されるようになってきた.OABは,他覚的な所見より自覚症状を重視した症状症候群であり,「尿意切迫感」を有するものがすべて当てはまる.尿意切迫感とは,急に起こる,抑えられないような強い尿意で,我慢することが困難な愁訴であり,ただ単に強い尿意があるが我慢できるものとは異なることがポイントである.OABは,尿意切迫感を有するものの尿失禁は伴わないdry OABと,尿意切迫感を有しかつ尿失禁も認めるwet OABに分類され,従来の切迫性尿失禁はwet OABに当てはまることになる.
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