今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション
ここが聞きたい105例の対処と処方
V 腫瘍
【術後排尿障害】91.膀胱瘤修復術後の排尿障害の患者です.
沖 明典
1
1筑波大学大学院臨床医学系機能制御医学専攻婦人周産期医学分野産婦人科
pp.614-615
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101524
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1 診療の概説
高齢化社会が進むわが国では子宮脱を中心とした性器脱の症例は増加傾向にある.性器脱として一括してもその発症様式はさまざまであり,個々の症例に対して,その病態を理解して適切な治療を行うことが必要である.膀胱瘤(膀胱脱)は高齢者に多く,若年者では少ないとされる.そのため膀胱瘤の治療のみを行っても新たな腹圧の逃げ道を求めて新たな性器脱が再発することは稀ではない.詳説については成書に任せ,本稿では膀胱瘤治療後の排尿障害を解説する.膀胱瘤の発症機序が腟前壁の支持組織の損傷による腟前壁の弛緩や膨隆であるため,その治療は恥骨頸部筋膜(pubocervical fascia)の縫縮に主眼が置かれる.膀胱瘤の術前に多くみられる症状として排尿困難があるが,ときとして術後に腹圧性尿失禁(stress urinary incontinence : SUI)を生じることがある.これは後部尿道膀胱角(posterior urethrovesical angle : PUV角)の変化によって説明される(図1).PUV角は正常では90~100°とされているが,術前には膀胱の脱出のため正常よりも鋭角となり,本来はSUIの傾向があるべき患者で膀胱瘤のためにマスクされてしまい,むしろ排尿困難となっていたものが,手術によりPUV角が鈍角となったり消失することによりSUIが顕性化してしまうものである.
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