今月の臨床 母体救急
母体救急―対応の実際
4.肺水腫・ARDSへの対応
酒井 啓治
1
1杏林大学医学部産婦人科
pp.727-729
発行日 2007年5月10日
Published Date 2007/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101388
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はじめに
妊娠中は1回換気量,分時換気量が約40%増加するため,動脈血酸素分圧は軽度上昇し,炭酸ガス分圧は軽度低下する.このため,妊娠中は気道閉塞や低換気により急速に呼吸不全となりやすい状態である.妊娠中~後期・産褥期において最も頻度の高い肺機能不全は肺水腫であるが,悪化すると母体死亡を引き起こす重篤な疾患である.肺水腫は肺毛細管圧の上昇から肺の間質,肺胞腔内に体液が貯留するもので,周産期における肺水腫の原因には妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension : PIH),切迫早産に対する子宮収縮抑制剤やステロイドの投与,多胎妊娠,大量出血などがある.また,妊娠・産褥期の最も重篤な肺機能不全は成人呼吸窮迫症候群(adult respiratory distress syndrome : ARDS)である.その病態は肺毛細血管内皮細胞の透過性亢進によるもので,敗血症などに合併することが多く,予後不良な疾患群である.
これらの肺機能不全は不可逆的になる前に診断し早期より集中治療室で管理し,適切な治療を開始しなければならない.
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