今月の臨床 無痛分娩・和痛分娩ガイダンス
VIII.助産ケアによる和痛
助産ケアにおける和痛―われわれの工夫
86.湘南鎌倉総合病院における和痛の工夫について教えて下さい.
長谷川 充子
1
1湘南鎌倉総合病院
pp.588-591
発行日 2004年4月10日
Published Date 2004/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101260
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1 はじめに
「ご妊娠ですよ,おめでとうございます!!」と告げられたときに笑顔であった人も,妊娠経過を重ねてくるとともに喜びと不安の入り混じった複雑な心境に,妊婦の多くはなっていく.妊娠後期に入る頃には出産の情報をいろいろなところから得て,「自分でも赤ちゃんを産むことができるのか?」と期待と不安のなかで出産を迎えようとしている.
その情報がいいかげんなものであったり,伝える側が自分の都合のいいように出産の痛みを誇大,誇張して伝えると,これから出産に臨もうとしている妊婦は不安に陥ることになる.産痛には個人差があり,なかには始めからあまり強く感じない産婦もいる.分娩時の子宮収縮,軟産道開大,骨盤底の圧迫,会陰の伸展によって生じる痛みで分娩が進行するとともに,痛みの場所も変化してくる.それは,生理的な因子と精神的因子による.
赤ちゃんを迎えようとする妊婦が不安なく安心して出産に臨むことができるように,分娩経過についてエビデンスに基づいた正しい知識を伝達していくことが医療者の役目である.出産をネガティブにとるか,ポジティブにとるかで,産痛を“産みの苦しみ”ではなく“産みの喜び”として迎えることができれば,80%くらいは楽しい出産として産痛を受け入れられる.恐怖心や不安感を持つことで,産痛を強い痛みと感じてしまう.サポートする人がいて,励まし,孤独感を取り除くと不安が解消され,産痛も緩和される.妊婦は,出産する施設の医師,助産師の分娩に対する考え方を理解し,「ここで分娩をしたい」「この人達と一緒なら安心して分娩できる」という信頼関係が築かれたときから,産痛を待ち遠しく感じるようになる.
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