今月の臨床 ここが聞きたい 産婦人科外来における対処と処方
IV. 感染症
[トリコモナス]
68.帯下異常で受診し,腟分泌物ならびに尿中にトリコモナス原虫が認められました.対処と処方について教えて下さい.
須野 成夫
1
,
繁田 実
1
1近畿中央病院産婦人科
pp.554-555
発行日 2003年4月10日
Published Date 2003/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101009
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1 診療の概説
トリコモナス腟炎は産婦人科診療中に遭遇する最も多い女性性器感染症の1つであり,性感染症(STD)の1つである.
トリコモナス腟炎は,原虫類の鞭毛虫であるトリコモナス原虫(Trichomonas vaginalis)による感染で,腟炎だけでなく外陰炎,尿道炎,膀胱炎などを引き起こす.症状は漿液性または希薄膿性泡沫状の悪臭の強い帯下とともに,外陰部掻痒感,灼熱感,排尿時不快感などの尿道炎症状がある.また,子宮腟部にびらんが生じ,性交時に出血をみることもある.
男性においては,尿道や前立腺に寄生した場合でも症状を訴えることは少ないが,稀に尿道炎を起こすことがある.
妊娠中のトリコモナス腟炎は非妊時に比べて頻度は低く,胎児,新生児への垂直感染は稀である.これは妊娠に伴う腟自浄作用の亢進によりトリコモナスの棲息が困難になることや,児でのトリコモナスの繁殖が困難なためによるものである.
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