今月の臨床 ここが聞きたい 産婦人科外来における対処と処方
II. 内分泌
[機能性子宮出血]
29.タモキシフェン投与時の子宮出血の対処と処方について教えて下さい.
澤田 類
1
,
村上 節
1
1東北大学医学部産婦人科
pp.440-441
発行日 2003年4月10日
Published Date 2003/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100970
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1 乳癌とタモキシフェン
近年,日本でも乳癌(breast cancer)の頻度は増加しており,毎年約3万5,000人の女性が乳癌にかかり,約9,000人が死亡している.乳癌の腫瘍細胞はエストロゲンならびにプロゲステロンレセプターが陽性のことが多く,ホルモン依存性が高いことで有名である.以前はエストロゲンレセプター陽性例に対する術後補助療法として観血的に両側卵巣摘出術が行われてきたが,1971年に抗エストロゲン剤であるタモキシフェン(tamoxifen)が治療薬として開発され,その治療効果の高さ,投与方法の簡便さ,副作用の少なさより,以後,同剤を用いた非観血的なホルモン療法が広く行われるようになった.
タモキシフェンは,エストロゲンのエストロゲンレセプターへの結合を妨げ,乳癌に対して35%の有効率を持つと報告されている.投与期間についても,2年より5年のほうが無再発期間,生存率ともに良好で,対側乳癌の発生率も減少することが明らかとされたため,1997年には術後のホルモン療法としてタモキシフェン5年間投与が一般化された.
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