今月の臨床 妊娠と薬物―EBM時代に対応した必須知識
妊産婦,授乳婦人での薬物の選択と投与法
8.消化器病薬
江口 勝人
1
1岡山市立市民病院診療部
pp.703-705
発行日 2003年5月10日
Published Date 2003/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100930
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はじめに
日常診療の中で,妊婦(その時点では妊娠と認識していない場合がある)が合併症を有し,やむなく薬剤を投与せざるを得ない状況はよく遭遇することであるが,胎児への影響という点でしばしば問題となる.胎児に対する影響とは,主に催奇形性と健康障害である.今も昔も薬物の胎児への影響を考慮して,人工妊娠中絶を行うかどうかは,患者のみならず産婦人科医にとっても大きな問題である.この重要な判断を下す(make decision)には,合併する疾患が胎児に及ぼす影響(特に治療しない場合)と,使用される薬剤の胎児への影響の両面を理解していなければならない.
妊婦に薬剤を投与する際,基本的に十分な説明と同意(informed consent)を得る必要があることは言うまでもないが,妊婦に投与して絶対に安全な薬剤はない.ほとんどの薬剤情報(DI)に記載されているごとく,治療効果のほうが胎児の安全性を上まわると判断された時のみ投与するのが原則である.
妊娠婦人が消化器病(胃潰瘍,十二指腸潰瘍,潰瘍性大腸炎など)を合併する頻度は比較的少ないと考えられるが,消化器病様の症状を呈することはしばしばである.いわゆるつわり(妊娠悪阻)や便秘などがそれである.本稿ではこれらの点について,なるべく実際の臨床から述べるため,あえて疾患別に記述したことを御理解いただきたい.
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