今月の臨床 Urogynecology
尿失禁の治療
3.尿失禁の手術療法
嘉村 康邦
1
,
山口 脩
1
1福島県立医科大学医学部泌尿器科
pp.786-791
発行日 2004年6月10日
Published Date 2004/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100540
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はじめに
近年の尿失禁手術の変遷はめまぐるしい.加藤ら1)は尿道スリング手術に関する論文のなかで,「女性腹圧性尿失禁の手術術式は100余に及び,短期の成績でもてはやされ,合併症,長期成績で失墜する栄枯盛衰を繰り返してきた」と述べている.1980年頃より,Burch法や,Marshall─Marchetti Krantz法などの開放手術が激減し,Stamey法に代表される針式膀胱頸部挙上術が主流となった.しかし,これらの長期成績が不良であると報告されると,以前は再発性尿失禁などの重症尿失禁のみに適応とされた尿道スリング手術が注目を浴びるようになった2, 3).スリング材料は,患者自身の筋膜を用いる施設もあれば,人工材料のところもある.また,スリング材料の牽引糸を恥骨に固定する方法(恥骨固定式尿道スリング手術)がポピュラーになった時期もある.一方で,Burch法の長期成績がよいことから,laparoscopic Burchを試みている施設もある4).また,スリング手術でありながら,従来の尿禁制理論とは異なる考え方から生まれた,膀胱頸部ではなく中部尿道をtension freeでスリングするTVT法が,1999年,本邦でも保険適用となり急速に普及しつつある5).このように手術手技が乱立しているのは,真に長期の尿禁制効果が良好で,かつ低侵襲の方法をまだ模索中であるからに他ならない.
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