今月の臨床 妊婦と胎児の栄養管理
異常妊娠と栄養管理
妊娠糖尿病
安日 一郎
1
1独立行政法人国立病院機構長崎医療センター産婦人科
pp.280-283
発行日 2006年3月10日
Published Date 2006/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100052
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はじめに
種々の妊娠中の合併症のなかで,食事療法がその治療の基本戦略となるという意味で,耐糖能異常妊娠は多くのエビデンスが積み重ねられてきた唯一の妊娠合併症といえるであろう.しかしながら,その耐糖能異常妊娠ですら,その適切な摂取カロリー量,特に肥満妊婦に対する食事療法のあり方については,必ずしも確立したエビデンスがなく未だ結論をみていない1).
妊娠糖尿病(GDM)は「妊娠中に発症したか,または初めて認識された耐糖能低下をいう」と定義されている(1995年,日本産科婦人科学会)2).この定義から,GDMには妊娠前に診断されずに隠れていた2型糖尿病,妊娠中に偶発的に発症した糖尿病も含まれる.したがって,GDMには,食事療法のみで管理できる軽度の耐糖能異常から妊娠前にすでに診断されていた糖尿病(妊娠前糖尿病)と同等の耐糖能異常まで,あらゆる程度の耐糖能異常が含まれている.食事療法はGDMの重症度のいかんにかかわらず基本戦略である.
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