症例検討会 骨・軟部腫瘍20例
〔症例2〕膝関節腫瘍の1例(Synovial sarcoma)
岡田 聰
1
,
吉田 憲一
1
,
明松 智俊
1
,
広畑 和志
2
,
水野 耕作
2
,
川井 和夫
2
,
謝 典穎
2
1神戸大学中検病理
2神戸大学整形外科
pp.482-485
発行日 1980年5月25日
Published Date 1980/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408908599
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患者:29歳,女.主訴:左膝関節の疼痛と腫脹.53年11月,走つた直後に左膝関節の疼痛,腫脹および熱感をきたしたが,安静により消褪した.1ヵ月後に再び同様の症状が出現したため神大整形外科を受診した.左膝蓋上部に腫脹があり,弾性軟で触診上では滑膜の肥厚を思わせた.関節穿刺により血性穿刺液が得られた.X線像(第2-1図)では,大腿骨の下部前面から膝蓋骨上方にかけて手拳大の軟部腫瘤の陰影が存在し,腫瘤部に一致して大腿骨前面に圧迫像および軽度の硬化像を認めた.また,大腿骨の下部には骨破壊像もみられた.膝部の色素性絨毛結節性滑膜炎を疑い手術を施行した.手術時,膝蓋上方の腫瘤は手拳大で,一部被膜に覆われ,割面は灰白色調,全般にmyxoidで非常に軟かく,一部にわずかに砂粒状の硬結物を触知し得た.また所々に斑点状の出血巣が散見された.腫瘤の中心部にはcysticな空隙が多数存在し,ごく少量の透明液を容れていた.軟かいmyxoidな腫瘍組織が大腿骨果間前面より骨を破壊し骨髄内へ侵入していた.摘出腫瘍組織の病理組織学的検索で悪性腫瘍と診断し,54年3月9日,股関節離断術を施行した.術後4ヵ月の現在,経過良好で再発や転移巣は発現していない.
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