最新基礎科学/知っておきたい
SSX(synovial sarcoma X chromosome breakpoint)遺伝子
吉岡 潔子
1
,
中 紀文
2
,
竹中 聡
1
,
伊藤 和幸
1
1大阪府立成人病センター研究所生物学部門
2大阪府立成人病センター病院骨軟部腫瘍科
pp.168-171
発行日 2010年2月25日
Published Date 2010/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101682
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■はじめに
悪性軟部腫瘍は頻度は少ない(全悪性腫瘍の0.14%,1995~1999年日本病理剖検輯報)が若年にも認められ,化学療法に抵抗性を示し肺転移を来して予後の悪いものも少なくない.滑膜肉腫(synovial sarcoma)は若年者(15~40歳)に発生することが多く,大腿,膝関節部など,主として四肢の関節近傍に好発する比較的頻度の高い肉腫(全軟部肉腫の5~10%)16)の一つである.滑膜肉腫の組織が滑膜(関節の内側を覆っている膜様組織で,関節液を産生したり異物を取り込んだりして関節軟骨を保護する)とよく似た形態のため当初「滑膜肉腫」と命名されたが,滑膜由来の腫瘍ではなく,misnomer(誤称)であることが病理学的に明らかになった12).1994年に滑膜肉腫の中に染色体相互転座t(X;18)(p11.2;q11.2)によって生じる融合遺伝子(染色体の一部がちぎれて他の染色体と融合してできた遺伝子)SS18-SSXが同定された4).さらに1995年にはSSX(synovial sarcoma X chromosome breakpoint)遺伝子が滑膜肉腫に特異的な融合遺伝子SS18-SSXを形成する遺伝子として単離された5).
ここでは滑膜肉腫とSSX遺伝子,免疫療法の分子標的としてのSSX遺伝子,軟部腫瘍におけるSSX遺伝子の発現,SSX蛋白の機能と標的治療について概説する.
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