視座
人工関節置換術問題の対策について
田中 清介
1
1近畿大学整形外科
pp.751-752
発行日 1986年7月25日
Published Date 1986/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408907439
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変形性股関節症に対する治療として人工股関節置換術(THR)が優れた成績をあげていることは今更述べる迄もない.しかし,その優れた成績も長期的にはゆるみ(loosening)をはじめとする合併症のために低下してくることも周知のところである.その対策として,1)THRの手技の改良,2)新しい術式の開発,3)THR以外の従来行われてきた術式の適応の拡大,などが行われている.
THRの手技の改良としては,大転子非切離で人工関節を正しい位置にしかも強固に固定するためのcementing techniqueを含めた種々の手術手技が考案されたり,人工関節そのものが改良されたりしてきた.特に,筆者が数年来注意して行っていることは,脚長差,骨盤傾斜,脊椎(特に腰椎)の後彎や側彎について,手術時に矯正すべきかどうかを,個々の症例で術前に十分に検討し,術中に予測通りの手術が行われるように努力していることである.一般に,両側股関節症の一側にTHRが行われた場合,反対側の関節症症状は改善される.しかし,進行する症例も時にみられる.この場合,脚長差,骨盤の傾斜,脊椎の後彎や側彎について考慮された上でTHRが行われておれば,反対側の関節症の進行が防げたのではないかと思われる例がある.また,このような考慮は人工関節にかかる応力の集中に基づくゆるみの発生の予防にも連がるものと思われる.
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