視座
「正常」に関して思うこと
井上 哲郎
1
1浜松医科大学・整形外科
pp.569
発行日 1985年5月25日
Published Date 1985/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408907188
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毎日の新聞に老齢化,高年者,老人病などの文字を見ないことはない.これはとりもなおさず医学の進歩により,我国も世界の三指に入る長寿国となったことによるものである.現在,世界の人口は約44億人とされ,30年前(25億)に比し,約2倍となっており,15年後には62〜65億人に達すると推定されている.これら人口増加の主因は高齢者の占める割合が高くなるためとされ,この時期には65歳以上の人口が,11億6000万人となり,おおよそ6人に1人がいわゆる老人ということになる.我国に例をとってみても,本年度が全人口約1億2000万人のうち60歳以上の人が約1726万人(1950年 約630万人),15年後には約2650万人になると推定されている.これらのことから考えても向後高齢者の患者が増加することは間違いなく,医学面のみならず社会面での問題も大きくなってくることであろう.このような高齢化社会になるにつれ,最近「正常とは?」ということをとみに考えることが多くなってきた.「正常」を広辞苑で引いてみると,「他と変わったところがなく普通であること」,日本国語大辞典でひいてみると「ある規範のうちにあること」とあり,他あるいは規範をどこに求めるかが問題となる.
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