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先天性骨系統疾患と悪性腫瘍の合併の実態はよく知られていない.この実態を探るために国内の全整形外科学教室および10人の外国人学者に質問状を送ったところ,111例の症例が回答された.これらのうち,単発あるいは多発性骨軟骨腫と軟骨肉腫の合併(74例),内軟骨腫症と軟骨肉腫の合併(6例),Maffucci症候群と軟骨肉腫の合併(3例),fibrous dysplasiaと骨肉腫(8例),線維肉腫(4例),軟骨肉腫(2例)の合併はすでによく知られている合併組み合わせである.
その他に少数ながら従来あまり知られていない組合わせが含まれていた.すなわち,Osteogenesis imperfectaと骨肉腫の合併が3例あった.この合併はRutkowskiが文献中に8例みられると記載しているが,シドニー大学のSillence教授は250例,ケープタウン大学のBeighton教授は300例の骨形成不全症患者中に1例の悪性腫瘍の発生もみていないと回答しているので,両者の合併を偶然以上のものとは即断し難い.Ostcogenesis imperfectaには,病的骨折の過剰仮骨が骨肉腫と誤診され易いという問題も付随しているので,今後の研究が要求される.Rothmund-Thomson症候群と骨肉腫の合併は3例の回答があった.この他に文献上Roschlau,Dick,Daviesらの症例報告があり,さらに本症候群との類縁性が示唆されているWerner症候群62例に6例の悪性腫瘍合併例があり,そのうち4例が肉腫であったというPerloffの報告,Hutchinson-Gilford progeriaと骨肉腫の合併を記載したKingらの報告もRothmund-Thomson症候群と骨肉腫との間になんらかの相関があることを示唆していると思われる.Metaphyscal chondrodysplasia,type McKusickと悪性リンパ腫との合併は2例あった.この骨系統疾患は下床に一次性免疫欠陥をもっていることが知られているので,免疫欠陥を接点とした悪性リンパ腫との相関が蓋然である.Spondyloepiphyseal dysplasia tardaでは,骨肉腫合併の自験例に加えて軟骨肉腫の合併が1例回答された.文献中にはこの骨系統疾患に悪性腫瘍が合併したという報告が見当らないので,この合併の意義は現1時点では不明である.Gardner症候群は骨腫,消化管ポリープ皮脂嚢腫に加えて線維腫,デスモイド,線維肉腫の合併が知られているが,回答された1例は舌骨の軟骨肉腫であり,その意義は不明である.
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