特集 脊椎外傷—早期の病態・診断・治療—(第7回脊椎外科研究会より)
巻頭言/脊椎外傷—早期の病態・診断・治療について
小野村 敏信
1
Toshinobu ONOMURA
1
1大阪医科大学整形外科学教室
pp.305
発行日 1979年4月25日
Published Date 1979/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905880
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脊椎骨折や脱臼などの脊椎外傷の発生頻度が増加してきているかどうかについては,信頼できる統計に乏しいために断定できないが,高速化や高層化などの近代生活の条件はこの種の外傷が発生しやすい母地を醸していると考えられる.整形外科学においては脊椎外傷は永らくchallengingな課題であつた.しかし個々の整形外科医にとつてこの問題は決して避けて通れるものではないにもかかわらず,研究のmain themeとなることは少なかつたし,とくにわが国においてはたとえば本症の主たる後遺症の一つであるparaplcgiaについても社会的な対応が未だにきわめて不十分であるというのが現状である.
たしかに脊椎外傷の重篤度は合併する脊髄損傷の有無と程度に左右されるし,またたとえば手術などによつてこの神経症状の予後に大きな影響を与えうる可能性がむしろ少ないのは残念ながら事実である.そのために脊髄障害の強いものでは神経学的予後が絶望的なために骨傷の治療はあまり重視されず,また神経障害を伴わないものは,その幸運のゆえに,ややもすればひととおりの治療ですまされるといつた傾向がなかつたとはいえない.
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