視座
身体障害者の声
佐藤 孝三
1
1日本大学医学部整形外科学教室
pp.745
発行日 1971年9月25日
Published Date 1971/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904590
- 有料閲覧
- 文献概要
病院の前庭を車椅子に乗つて散歩している患者に出あつた.「そろそろ退院が近づいておたのしみだね」というと「それがそうでもないのです.一頃は早く退院したくて仕方がなかつたのですが,退院が近づいたら将来が不安になつて毎日悩んでいます」という.「君は自宅で家業を手伝うから喰べる心配はないといつていたじやないか」というと「自分はその点で恵まれていると思いますが,毎日毎日の不自由さを考えると精神的に参つてしまいそうで不安です」という.「それは障害者が誰でも持つている不安で,それに打ち克つために身体のみならず精神もきたえなければいけないと皆がいつているだろう.とにかく頑張つてみることだね」
ここまでは平凡な障害者との会話である.だが,そのあとに患者がつけ加えた次の言葉には考えさせられるものがあつた.「自分は比較的恵まれた環境にありながらも,やはり他の障害者と同じように,次第に社会から疎外されて日蔭者になつてゆくでしよう.
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.