視座
大腿骨骨頭のcollapse
伊藤 鉄夫
1
1京都大学医学部整形外科学教室
pp.647
発行日 1971年8月25日
Published Date 1971/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904577
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大腿骨頸部内側骨折の治療は長年にわたる研究にもかかわらず,未だ十分な成績をあげることができない,このことが人工骨頭や人工関節の開発を促進した.これは,長い間,人類の夢であつたが,その夢がようやく現実のものとなつた.片山名誉教授の股関節形成術の歴史(本誌第6巻第6号)を読んでみると,過去において先輩達が如何にこの夢を追つて努力してきたかを知ることができる.しかし,人工関節の出現にもかかわらず,一方では頸部内側骨折の基礎的研究や治療の本道である整復固定の研究は依然としてたゆみなく続けられている.頸部内側骨折においては何故に骨頭のcollapseがおこるのか,またこれを防止することはできないのか,という疑問を持つことは意義のないことであろうか.人工骨頭置換術のさいに摘出された骨頭標本の組織像をみると,全例において骨頭の大部分が早期に阻血性壊死に陥つており,骨頭靱帯動脈からの血液供給は殆んど期待されない.それ故,治療は,事実上,自家骨頭移植である.自家骨移植では,椎体固定に用いられた移植骨にもみられるように,多少のcollapseがおこるのが通例である.
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