検査法
骨・軟骨の病理組織的観察法(II)—病変の組織表現(1)
三友 善夫
1
Yoshio MITOMO
1
1東京医科歯科大学病理学
pp.449-457
発行日 1970年6月25日
Published Date 1970/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904412
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骨・軟骨の病理組織学的検索は剖検材料が四肢切断の手術材料をのぞくと,病変の全貌が検索の対象の材料の中に含まれることは極めて少なく,試験切除材料のように一部分の病変の観察か,ときにはその一部分の中に副病変のみで目的の主病変の含まれないことすらある.単純な炎症や腫瘍そのものが得られたとしてもその時期や治療による影響を考えねばならない.さらに骨・軟骨はこの単一な病変に骨の反応性増生,新生,吸収,破壊,骨折,線維化,出血,感染などの副病変が加わつて複雑な形態像を作り上げている.そして採取された材料という狭い小さい場のみの観察によつてその病変が患者の中で果たしている主役的存在を見落して,材料内での主役的病変を把握してしまうことがある.たとえば,ほとんどの骨病変に出現する巨細胞についてみても骨肉腫,巨細胞腫,骨嚢腫,類骨性骨腫,良性骨芽細胞腫,骨軟骨腫,内軟骨腫,軟骨芽細胞腫,軟骨粘液線維腫,線維肉腫など数限りないほどである.この破骨細胞性多核巨細胞を2〜3個把握しただけでは鑑別すべき疾患名を列挙するにすぎないだろう.巨細胞の存在の背景である組織構造,その組織構造の場である個体の性状,つまり年齢,性,病変の部位についての知識,レ線検査の所見による全体像の認識があつてその巨細胞の占めている位置が知れる.
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