視座
人類月に立つ
片山 良亮
1,2
1東京慈恵会医科大学
2東急病院
pp.573
発行日 1969年8月25日
Published Date 1969/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904105
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この視座を書くようにという知らせを受けとつた日は,あたかもアポロ11号のLMイーグルが月面に着陸し,またアームストロングとオルドリンの宇宙飛行士が,人類が初めて月面に降り立つた日でもあつた.ついては,この世紀の偉業を記念して私も何か雑感をのべてみたい.
月の征服は全く現代科学の勝利であり,人類の勝利であるが,あの遠距離と長時間の月旅行が極めて正確に,少しのくるいもなく,なし遂げられたことは驚きのほかはない.昔から「天の運行は健なり」とか,「天行に健なり」といつて,太陽系の運行の正鵠なことを物事の正確なことの譬えにさえしていたほどであるから,これを数学的に計算するのは理論的にそれほど因難なことではないのかも知れない.しかし,それは理屈であつて,今までのような紙と鉛筆だけの計算では到底できるものではない.これはコンピューターの働きにほかならない.またこの成功には通信網の発達も大きな働きをしたと思う.たとえば,その1例として,アポロ11号内の長時間の宇宙旅行は勿論のこと,たとえ月面に降り立つたとしても地球との通信がなく孤独であつたならば,その寂しさには到底堪え得ないものがあったと思う.
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