論述
大腿骨頭の虚血性壊死について—外傷性遅発性のものと,特発性のものと
水野 祥太郎
1
Syotaro MIZUNO
1
1大阪大学医学部整形外科学教室
pp.742-754
発行日 1968年9月25日
Published Date 1968/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903969
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いとぐち
大腿骨頭の血行の阻害が重大な病変の原因となることは,私どものペルテス病研究13,14)における初期の完全な虚血像から推定されていたところであつて,海外においても多くの注目をあつめていたところである.しかし,その決定的な証明は容易に達成されなかつた.私どもはまず,ペルテス病の初期病変をとらえる目的をもつて骨頭核の骨髄造影を検討しはじめたが,これは骨髄造影に関する富士9)らの多年の経験が根底に横たわつていた.
最初にわれわれをひきつけたものは静脈像であつたが,その読影にいちじるしい矛盾をともなうことに間もなく気づかれて,他に道を求めることとなつた。静脈造影の不条理さは事実による証明を附して,近く英文をもつて発表される予定である.かくして松本ら17)の努力による血流測定が軌道に乗るにいたつた.一方,柳谷27,28)らの股関節症研究は派生的に特発性無腐性壊死を気づかしめて,症例があつめられ.同時に,増原,岩坪11)らの頸骨折偽関節の研究,渡辺,提島25)らの頸骨折治療の遠隔成績検討などは期せずして外傷性虚血性壊死の症例をあつめる結果となり,血流の状態と組織像,病理変化の過程は一致し,ここに大腿骨頭の無血管性(異血管性)壊死症候avascular (or dysvascular) syndromeなる概念にまとめられたのである.
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