境界領域/知っておきたい
ティッシュエンジニアリングを応用した人工血管
新岡 俊治
1
,
今井 康晴
1
1東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所循環器小児外科
pp.78-80
発行日 2002年1月25日
Published Date 2002/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903460
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【はじめに】
心臓外科領域における理想的な補填材料はいまだ発展途上にあり,多くの外科医は移植直後から生体適合性を有し,かつ移植後に再手術が不要で成長の可能性を有する生きた補填物を模索している.再生医工学(Tissue engineering)は1980年代後半に,臓器移植医療におけるdonor不足が深刻化している米国で提唱された新しい概念で,donorを必要としない人工臓器の開発途上で提唱された.工学(Engineering science)と生物学(Biological science)を共に応用し,生体吸収性ポリマーを足場として培養細胞から小組織をin vitroで作成しようという新しい学際的研究分野である.既に,皮下細胞(dermal fibroblasts)を用いたtissue engineered skinは実用段階であり,臨床において数百例の移植手術が行われている.その他,骨組織,軟骨組織,尿管組織,心臓弁膜組織,血管組織などの各分野において活発な研究が現在進行している.また,様々な吸収速度を有する生分解性-高分子ポリマーの研究開発も同時に進行しており,細かい生吸収速度,強度の調節が,多種類のポリマーの組み合わせによって制御可能となりつつある.作成される組織には生きた自己細胞が含まれているため,生物学的な成長,修復機転が見込まれ,より長い耐久性が期待できる.
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