診療余話
SpondylectomyかVertebrectomyか
富田 勝郎
1
1金沢大学整形外科
pp.1022
発行日 1993年9月25日
Published Date 1993/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901196
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先日,小生の脊椎腫瘍根治的手術(total en bloc spondylectomy)に関連してspohdylectomyかvertebrectomyか,2,3の方から聞かれました.実際,英語でspondylectomyかvertebrectomyか混乱しているように思います.私自身もこれまで両方適当に使ってきました.しかし3年前,モントリオールSICOTの夕食会でイギリスの整形外科医グループからこの点に関して面白い話をきく機会があったので紹介します.即ち,spondylectomy,vertebrectomyのどちらでもよいかと問うたところ,迷うことなく異口同音にspondylectomyが正しい,vertebrectomyは英語を知らない人達が作った言葉だ,と即答され,びっくりしました.で,その理由は,と尋ねると,それはギリシャ語(Greek)とラテン語(Latin)を母体として育ってきた英語の歴史と,芸術の花開いたギリシャ時代,即ち,ヒポクラテスの時代にまで遡った医学の歴史を学んでいるかどうかによる,というのです.即ち,医聖ヒポクラテスは「病気を治すことは芸術―art―に通じる」と説いていたので,以後彼に敬意を表して,病気(patho-)に関する名称はギリシャ語を優先して用いるようになっているそうです.
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