視座
足持ち3年,巻き8年
長尾 悌夫
1
1聖マリアンナ医科大学整形外科
pp.1227
発行日 1991年11月25日
Published Date 1991/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408900458
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私が整形外科を志した時代には“足持ち3年,巻き8年”とよく言われた.言うまでもなく“桃栗3年,柿8年”をもじったもので,一人前の整形外科医になるには,ギプス巻きや手術時の足持ちを3年,ギプス巻きに至っては8年の研鑽を必要とするという意味であり,足持ちとギプス巻きの重要さを具現した言葉である.
学生の頃,登山中転倒して腓骨骨折をおこした私は,帰京後某先輩にギプスを巻いていただいた.そのギプスは学生の私が見ても実に見事なものだったが,切割された時,割面を見てその厚みの配分の妙にまた驚き,私はそれを保存して,整形外科に入局してからも時々出してきては自分のギプス巻きの未熟さの反省材料とした.ohne Gips keine Orthopädieと言われた時代の先輩達のギプスは見事なものが多かった.整形外科の進歩と共に足持ちもギプス巻きも様変りし,創外固定の出現と共に架橋ギプスはほとんど姿を消したし,各種装具の開発と共にギプスを巻く機会も確実に減った.最近はハッと息をのむような素晴しいギプスには滅多にお目にかかれない.足持ちも手術台が代行してくれることが多くなってきたが,足持ち3年,巻き8年の精神は変ってはならないと思っている.
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