視座
骨・軟部悪性腫瘍に対する温熱療法
松井 宣夫
1
1名古屋市立大学整形外科
pp.683-684
発行日 1990年6月25日
Published Date 1990/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408900121
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癌に対する温熱療法は,古くて新しい治療法といわれている.すでに紀元前に行われた,癌の焼却法などに端を発するが,加温が体表面から行われたため,熱さに対する患者の苦痛が強いことなど,満足すべき成果は得られなかった.さらに手術療法,放射線治療,抗癌剤の進歩などにより,一時期ほとんど顧みられない治療法であった.しかし近年,組織培養の進歩や癌の基礎的研究の進歩などにより,腫瘍細胞に対する熱の生物学的効果が定量的に分析されるようになったこと,さらに癌細胞に対し,放射線や抗癌剤に温熱療法の併用により相乗的効果が得られることが基礎的研究により裏付けられたこと,また加温装置が開発,改良されたことにより,悪性腫瘍に対する温熱療法がにわかに広く臨床応用されるに至った.
現在,温熱療法が臨床応用されている科としては,体表腫瘍に対し皮膚科,脳腫瘍に脳外科,消化器や肺癌などに内科,外科,子宮癌に婦人科,膀胱癌に泌尿器科,放射線療法との併用として放射線科などがあげられる.しかし整形外科領域では,1988年京都において第5回国際温熱療法学会が菅原務会長のもとで行われたが,国内外においても未だほとんど温熱療法に関する基礎的研究,臨床応用も行われていないのが現状である.ことに骨悪性腫瘍に対する温熱療法は皆無といえる.
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