視座
運動は治療のひとつ
平岡 弘二
1
Koji HIRAOKA
1
1久留米大学医学部整形外科教室
pp.329
発行日 2024年4月25日
Published Date 2024/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202932
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運動の医学の中での役割は徐々に大きくなっている.WHOは,成人の身体活動が総死亡率,循環器疾患死亡率の低下,がん,2型糖尿病発症の予防などにつながる可能性を示唆している.成人の場合,中強度の有酸素性の身体活動を少なくとも週に150〜300分,または高強度の身体活動を少なくとも75〜100分行うか,または週全体で中強度の活動と高強度の活動の組み合わせによる同等の量を行うと,実質的な健康上の利益が得られるとしている.このように,一般的には運動は疾患の発症予防として必要とされることが多い.
一方,整形外科領域ではサルコペニア,骨粗鬆症,各種術後の機能回復など,運動は治療として必須であり,その主な役割は,患者さんのquality of life(QOL)の向上である.また近年,がん治療においては運動によるがん進行の抑制メカニズムの研究が進んでおり,運動をすることで筋肉から分泌されるマイオカインなどの生理活性物質ががん細胞に影響し,増殖や浸潤転移の抑制に働いている可能性が考えられるようになってきた.
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