最新基礎科学/知っておきたい
運動とマイオカイン—骨格筋を中心とした多臓器連関
今井 祐記
1
Yuuki IMAI
1
1愛媛大学プロテオサイエンスセンター病態生理解析部門/大学院医学系研究科病態生理学講座
pp.1482-1485
発行日 2022年12月25日
Published Date 2022/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202515
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はじめに
“Exercise is medicine”と言われるように1),運動が健康の維持やさまざまな疾患の改善に効果を発揮することは,整形外科医が最もよく理解できるのではないだろうか.運動により,骨格筋の質も量も向上し,基礎代謝が改善することで,主に骨格筋における糖や脂質の代謝状態が改善すると一般的には考えられてきた.それのみならず,近年,運動によって骨格筋から分泌されるさまざまな因子が,まるでホルモンのように他の臓器に作用し,骨格筋を中心とした多臓器連関として,健康維持や疾患改善に役立っていることが明らかになってきた.免疫系をはじめ多様な細胞から分泌されて他の組織や細胞に作用するサイトカイン(cytokine)や脂肪組織から分泌される因子であるアディポカイン(adipokine)にならって,このような骨格筋から分泌される因子はマイオカイン(myokine)と呼ばれている2).
本稿では,マイオカインのなかでも,運動によってその分泌が上昇することで,多臓器に影響を与える代表的な2つの因子について,最近の知見を紹介する.
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