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軟部肉腫治療薬:エリブリン
中井 翔
1
Sho NAKAI
1
1大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科)
pp.1170-1173
発行日 2019年11月25日
Published Date 2019/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201520
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エリブリンメシル酸塩(エリブリン:商品名ハラヴェン®)は,神奈川県の三浦海岸に生息するクロイソカイメンから発見された抗がん物質ハリコンドリンBの誘導体で,日本で開発された微小管重合阻害薬である.2011年に手術不能または再発乳癌の治療薬として,2016年に悪性軟部腫瘍の治療薬として国内承認され,現在世界中で広く使用されている.
本薬はアントラサイクリン系抗癌剤治療を含む,少なくとも2レジメンの前治療歴を有する進行または再発の軟部肉腫(脂肪肉腫または平滑筋肉腫)の症例に対して,ダカルバジンを対照薬とした臨床第Ⅲ相試験(309試験)において,無増悪生存期間(progression free survival:PFS)に有意な差はない(両群とも2.6カ月)ものの,全生存期間(overall survival:OS)を有意に延長した(13.5カ月vs. 11.5カ月)1).有効な抗癌剤治療が確立されていない肉腫領域において,OSの有意な延長が示された唯一の薬剤であり,その作用は非常に興味深い.また,エリブリンは投与時間が2〜5分と非常に短く,週1回の点滴投与を2週連続で行い,3週目は休薬するといったサイクルを繰り返すため,患者への負担が少ないことも特徴である.
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