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■はじめに
胚性幹細胞(embryonic stem cells;ES細胞),人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell;iPS細胞)の研究により,近年,再生医療の分野は目覚ましい発展を遂げている.一方で,これらのいわゆる万能細胞は倫理面や癌化などの未解決な問題を含み,臨床応用を困難とさせている.その点でより安全に臨床応用の可能な体性幹細胞を主体とした器官形成や組織再生の研究が推し進められてきた.整形外科領域においても現在,骨髄あるいは滑膜由来間葉系幹細胞を用いた骨・軟骨再生が注目され,すでに一部の施設においては臨床応用が実現している.しかし,骨髄採取による侵襲性,細胞培養にかかる手間や手技,また,その効果においては必ずしも満足のいくものではないと考えられる.そこで,より低侵襲でかつ,より効果的な治療が今後展開されるべきであろうと思われる.
一方,整形外科領域に先駆けて血管研究の分野においては,1997年にAsaharaら1)がヒト末梢血血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell;EPC)を発見して以来,従来の既存血管内皮細胞の再形成(angiogenesis)のほかにEPCからの発生(vasculogenesis)のメカニズムが関与することが明らかとなり,現在では,下肢虚血や虚血性心疾患の血管再生療法として行われるようになってきている8,15).整形外科領域においても,以前から特に骨再生における血管形成の重要性が指摘されており,血管医学は欠かせない分野であると言える.本稿では骨折治療において大きな可能性を秘めているEPC/末梢血CD34陽性細胞を用いた骨・血管再生療法に関する基礎研究,前臨床試験,「難治性骨折(偽関節)患者を対象とした,自家末梢血CD34陽性細胞を用いた骨・血管再生療法に関する第Ⅰ・Ⅱ相臨床試験」の概要につき概説する.
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