書評
『関節可動域制限(第2版)―病態の理解と治療の考え方』
萩原 嘉廣
1
1東北大学整形外科
pp.991
発行日 2013年10月25日
Published Date 2013/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408102850
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整形外科医としての生活がスタートした頃は,とにかく手術が上手くなることに集中し,がむしゃらに努力をしていたように思う.私の場合は上司にも恵まれ,一般外傷から始まり,脊椎,関節外科など,幅広く経験をさせてもらえる機会を得られた.術前診断,手術方法の選択,そして手術を行い,合併症を伴わずに成功すれば自分なりに満足感を得られていた時期があった.今から振り返ると恥ずかしい限りであるが,これでは患者が満足する治療にはなっていない.そのことに気づかされたのは,整形外科医になってしばらくしてからのことであった.外傷でも関節外科領域でも,関節可動域制限(関節拘縮)が回復しなければ,患者のADLは改善せず,通常の生活に戻れないのである.むしろ関節拘縮の治療に長くかかる場合も多い.
関節拘縮は「皮膚や骨格筋,腱,靱帯,関節包などの関節周囲軟部組織の器質的変化に由来した関節可動域制限」と定義されており,日常診療で頻繁に遭遇する合併症であるが,その病因はおろか,はっきりとした治療法も確立されていない.超高齢社会となった昨今,要介護者は増加の一途をたどっているが,関節拘縮は介護の大きな妨げになっている現実がある.つまり関節拘縮は整形外科などの運動器を扱う診療科だけの問題ではないのである.
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