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日本で初めて足の外科診療に特化した画像診断の教科書が上梓された.著者は小橋由紋子先生で,日本足の外科学会でも画像診断の分野で大活躍されている.
本書の卓越した点として,まずMRIの画像が本当にすばらしいことがあげられる.足の外科領域の診断に,MRIが驚きを持って迎えられたのは,距骨滑車骨軟骨損傷に対してであった.時期は1980年代末頃であったと記憶している.単純X線像では診断の難しいBerndt & Harty分類のⅠ期病変を描出できるということで,興奮を覚えたことを今でも思い出す.当時のMRIの画質と比較して,ここで提示されている美しいMRIの数々をみると隔世の感がある.本書では特別に「足の構造物のMRI撮影法」という章を立てて,詳細に記述されている.この章は「MRIの撮影シーケンスの決定方法」と「MRI撮影法の実際」に分けられ,前者では撮像のシーケンスを靱帯・腱,骨,軟骨,軟部組織などに分けて,目的別に撮影条件をどのようにすればよいかわかりやすく解説されている.また,後者では病変を描出するための,撮像肢位などについて細かく記載され,最適な描出条件が一目でわかるように工夫されている.外側靱帯,三角靱帯,Spring靱帯,二分靱帯,Lisfranc靱帯など靱帯別や,アキレス腱から長趾屈筋腱に至るまでほぼすべての腱について解説されている.さらに整形外科医が診断をする場合,よくアーチファクトかどうか迷う場合があるが,magic angle effectなどの骨関節領域に特異的なアーチファクトについて詳解されており,かゆいところに手が届くような構成になっている.足の疾患は,ピンポイントで疼痛を訴えるものも多く,撮り方を間違えれば折角MRIを撮像しても病変部がうまく描出できていないということが往々にしてある.その意味で整形外科医や放射線科医はもとより,MRIを実際に撮像されている放射線技師の方にも,是非本書を手元に置いていただきたい.
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