書評
『こどもの整形外科疾患の診かた―診断・治療から患者家族への説明まで』
川端 秀彦
1
1大阪府立母子保健総合医療センター整形外科
pp.393
発行日 2012年4月25日
Published Date 2012/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408102327
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近年の整形外科医の小児整形外科離れを危惧してか,ここ数年で何冊かの小児整形外科に関する教科書が出版されている.この書も同様の趣旨で書かれたものであるが,その内容はそれらと一線を画すものである.編者は長年にわたりこの領域に携わってきた第一人者であり,その下で研修し巣立っていった若手小児整形外科医と千葉グループ医師らの著した各項目を統一感のあるものに仕上げている.装丁は最近のこのたぐいの書籍の例に漏れず軽めで重圧感がなく,抵抗なく読み進めることができるであろう.
内容は下肢疾患,上肢疾患,体幹の疾患,スポーツ障害,成長に伴う問題,腫瘍性疾患,全身性疾患の7つの章と40の項目に分かれており,比較的頻度の高い疾患を取り上げている.各項目ではその疾患に対する初期対応を中心に,知識に乏しい初期研修医や小児科医などが読んでも容易に理解できるように書かれている.特に書名の副題にもあるとおり,家族が発するであろう質問を想定し,それに対する模範的な回答をすべての項目で記載しているが,これは一般整形外科医がとまどいやすいところであり,日常診療に非常に役立つのではないだろうか.また,ブロックダイアグラムを多用して,診断・治療の流れを視覚的に示しており,多忙な外来診療の現場で簡便に参照することができる.各項目の最後には最近の話題がまとまりよく記載されていて,すでに小児整形外科を専門にしている者にとっても各疾患の現状を知ることができ,知識を整理する意味でも一度手に取ってみて損はない.
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