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本書の初版が発刊されたのは1986年である.筆者は初版以降,改訂のたびに本書を買い替えており,もう20年以上も愛読していることになる.当時まだ研修医だった筆者にとって,図が多くコンパクトに腰痛を解説した本書は,非常に魅力的だった.初版から4版は,各項目が基本的に見開き2ページ(左が図,右に解説文)にまとまっており,日常の腰痛診療で疑問に思うこと,より詳しく知りたいことに明解に答えてくれた.筆者の患者への説明(ムンテラ)は,ほとんど本書の内容を基にしていた.したがって,川上俊文先生は,筆者にとっての腰痛診療の先生であるといっても過言ではない.
今回の改訂で,本書は思い切ったバージョン・アップを遂げている.筆者が気に入っていた見開き2ページの形式が廃止されたのはやや残念だが,図と写真が多用されている特長は変わらないし,2色刷りで読みやすく工夫されている.そして,何より内容がより広範かつ多角的なものとなりボリュームも大幅にアップしている.もはや,これまでの一般向けの解説書というイメージはなく,腰痛に関する立派な「成書」であるといってよい.疼痛の神経学的・薬理学的メカニズムから脊柱のカイネティクスまで,最新の知見が取り入れられており,川上先生のup-to-dateな文献・情報の収集力,分析力には感服する.しかし,初版以来貫かれてきた,語りかけるような平易な記述は健在である.布団の硬さからタバコや性生活の可否に至るまで,外来で患者から訊かれて答えに窮するような質問も,Q&A形式にして随所にまとめて掲載されている.このような,どの教科書を捲っても書いていないことこそ,実は患者や一般臨床医が知りたいことなのである.
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